京都というまちは、色々な顔をもつ都市です。　　大昔、（それは何十年か前）奈良で学生バスガイドをしていたこともあり、修学旅行生を引率して奈良、京都を中心に関西圏を走りまわっていました。

　神社仏閣がひしめく京都とは違い、こと北部よりの北山界隈は、落ち着いた趣の少し西洋の匂いすらする、
アカデミックな一角で、広大な植物園があり、大好きな安藤忠雄さんの建築の博物館があったりしました。

　不思議な伝説の漂う深泥ヶ池は住宅街の中にありますが、前山のかなたに比叡山の山頂が顔を見せ、
沼のごとくしんと静まりかえっているのです。

　北山界隈には、英国調とも北欧調とも思える雑貨やさんがあったり、本屋さんがあったりします。

植物園は賀茂川に沿っていて、この川は所謂京都市内を流れる「鴨川」とは違い、下鴨神社のある糺ノ森をはさんで賀茂川と高野川に分かれており、私はこの大川の分岐した光景がとても好きでした。

　このあたりの光景を思い浮かべながら、ふとこの地にまつわる鴨長明の「方丈記」を読んでいます。何故か、読みそびれていた著書ですが、由緒正しき良家に生まれ育ちながら、３０歳頃に大きな挫折をして・・・・のあたりが何だか親近感がわきました（私は由緒正しき良家にはほど遠いですが）　今は京都は昔のように路面電車は走っていません。　　北大路、北山方面には地下鉄が走っていて便利なのですが、風景を味わうことはできません。　　　賀茂川にはユリカモメが遊んでいます。北山、白川界隈は気品と風格、それなのに学生の匂いがなんとなくするところです。早春の植物園には「とさみずき」という名のレモン色の小花が咲いているでしょう。